こんにちは、シロロです。
「歌の時間のねらいを、指導案にどう書けばいいの?」
「歌わない子には、どう声をかけたらいい?」
「ピアノを弾くことに精いっぱいで、子どもの姿を見られない」
保育実習や毎日の保育で、このように迷うことはありませんか。
朝の会になったら歌う。季節が変わったら新しい歌を覚える。
園ではおなじみの活動ですが、「いつも行っているから」だけでは、目の前の子どもに合う進め方を考えることが難しくなります。
歌の時間のねらいは、全員が大きな声で上手に歌えるようになることだけではありません。
音やリズムを楽しむ。自分なりに表現する。友達の声や動きに気づき、一緒に楽しむ。
そのような経験も大切です。
今回は、子どもと音楽の研究を手がかりに、歌の時間に見たい子どもの姿と、困ったときに試せる工夫を考えます。
★この記事を書いた人

現役の幼稚園教諭
保育歴17年。保育士資格を持ち、子育ても経験してきました。
「遊びは学びのはじまり」を大切に、園でも家庭でも役立つヒントをやさしくお届けしています。
保育の歌の時間には、どんなねらいがある?
ねらいは、選んだ曲や子どもの年齢、その日の姿によって変わります。
たとえば、次のように考えられます。
- 歌やリズムに親しみ、声や体で表現することを楽しむ。
- 季節の歌を通して、自然や行事に興味をもつ。
- 言葉の響きや繰り返しのおもしろさを味わう。
- 保育者や友達と、声や動きを交わす楽しさを感じる。
- 自分なりの方法で音楽に参加する。
どれも、子どもに歌わせるための目標ではありません。
「この歌を通して、子どもにどのような経験をしてほしいか」を考えたものです。
指導案に書くなら
「季節の歌を上手に歌う」では、上手かどうかだけに目が向きやすくなります。
次のように書くと、子どもの姿を見ながら援助を考えやすくなります。
季節の歌に親しみ、保育者や友達と一緒に歌ったり、体を動かしたりすることを楽しむ。
または、
友達の声や動きに気づき、同じ歌やリズムを一緒に楽しむ。
大切なのは、例文をそのまま使うことではありません。
今の子どもたちは、何を楽しんでいるのか。何に戸惑っているのか。そこから、ねらいを選びます。
一緒に歌うと、友達を助けたくなる?
2010年、ドイツで4歳児96人を対象にした研究が行われました。
子どもたちは2人組になり、大人と一緒に歌ったり、リズムに合わせて体を動かしたり、打楽器を鳴らしたりしました。
別のグループは、音楽を使わず、よく似た活動をしました。
その後の様子を比べると、音楽活動をした子どもたちには、相手を助けたり、一緒に課題に取り組んだりする行動が多く見られました。
ただし、この研究だけで「歌えば、必ず優しい子になる」とは言えません。
さらに、2021年に幼稚園の日常に近い環境で行われた別の研究では、歌やリズムをそろえる活動による助け合いの増加は確認されませんでした。
研究から言えるのは、2010年の研究条件では、一緒に音楽を楽しんだ後に助けたり協力したりする行動が多く見られた、というところまでです。
研究は、保育の正解を決めるものではありません。
いつもの活動を見る角度を一つ増やしてくれるものとして受け取りたいですね。
「一緒に楽しい」が生まれる時間
同じ歌を歌う。
友達の声を聞く。
手拍子や動きのタイミングを合わせる。
歌の途中で顔を見合わせて笑う。
一緒に音楽を楽しむとき、子どもは自分の声だけでなく、周りの人にも目や耳を向けています。
研究者は、こうした「同じことを一緒にしている」という感覚が、人とのつながりを支える可能性を考えています。
歌の時間を、助け合いを教えるための訓練にする必要はありません。
まず大切にしたいのは、子どもが誰かと「一緒にやると楽しい」と感じられることです。
昔から、人は集まると歌い、踊ってきた
お祭りの盆踊り。結婚式で流れる歌。地域に受け継がれてきた踊り。
さまざまな文化で、音楽は祝い事や儀式など、人が集まる時間の一部になってきました。
研究者の中には、音楽が人と人との結びつきを支えてきたのではないかと考える人もいます。
同じ歌やリズムを楽しむと、言葉をたくさん交わさなくても、「今、一緒にいる」と感じることがあります。
園で歌う子どもたちも、歌を覚えながら、誰かと楽しさを分け合う経験をしているのかもしれません。

困りごと1|子どもが歌わない
みんなが歌っている中で、声を出さない子がいると、「参加させた方がいいのかな」と迷いますね。
でも、歌っていないからといって、何も感じていないとは限りません。
まずは、次のような姿を見てみましょう。
- 歌やピアノに耳を傾けている。
- 友達や保育者の顔を見ている。
- 体を揺らしたり、指先を動かしたりしている。
- 好きな部分だけ、小さな声で口ずさんでいる。
- 少し離れた場所なら、安心して聞いている。
大きな音が苦手な子、みんなの前では恥ずかしい子、まず見て覚えたい子もいます。
「歌って!」と繰り返すより、手拍子、楽器、体の動き、見ることなど、参加の方法を選べるようにします。
その子が安心できる距離を認めることも、音楽を楽しむための援助です。
困りごと2|子どもが集中せず、歌の時間がまとまらない
子どもが動き回る。友達と話し始める。途中で飽きてしまう。
そのようなときは、「きちんと歌わせる方法」だけを考えるのではなく、活動の形を見直してみましょう。
- 曲が長すぎないか。
- 子どもが親しみをもてる歌か。
- 座って歌うことが続きすぎていないか。
- 音の大きさや人数が負担になっていないか。
- 歌う時間が、子どもの生活の流れに合っているか。
一番だけ歌う。体を動かす部分を入れる。2、3人で楽しむ。子どもの好きな歌から始める。
全部を予定どおり行うより、「もう一回やりたい」と思えるところで終える方が、次の楽しみにつながることもあります。

困りごと3|ピアノに精いっぱいで、子どもの姿を見られない
ピアノを間違えずに弾こうとすると、楽譜や鍵盤から目を離せなくなることがあります。
しかし、歌の時間に必ずピアノが必要なわけではありません。
アカペラで歌う。手拍子だけにする。短いフレーズを歌って、子どもの声を待つ。簡単な伴奏に変える。
ときにはピアノを止めて、子どもの表情や動きを見る時間をつくってみるのもいいですね。
上手な伴奏より、保育者が自分たちを見て、一緒に楽しんでいることの方が、子どもにはうれしい場合もあります。
歌の時間に見たい、4つの姿
活動の後は、「大きな声で歌えたか」だけで振り返らず、次の姿を思い出してみましょう。
1.誰を見ていた?
保育者、隣の友達、楽器など、子どもの視線から興味の向かう先が見えてきます。
2.どんな音や動きに反応した?
好きな歌詞、手拍子、友達の動きなど、その子が楽しめる入口を探します。
3.まねしたり、返したりしていた?
ぴったりそろわなくても、相手を意識して声や動きを返す姿には、小さなやり取りがあります。
4.どの参加方法なら安心できた?
歌う、動く、鳴らす、見る、離れて聞く。次回の環境や援助を考える手がかりになります。

明日から試せる、5つの小さな工夫
- 友達の顔が見える座り方にする
半円や小さな輪にすると、互いの表情や動きに気づきやすくなります。 - 歌の途中に、待つ時間をつくる
子どもの声や動きが返ってくるのを待つと、やり取りが生まれます。 - 子どものリズムを保育者がまねする
「自分の表現が届いた」という喜びにつながります。 - 時間、人数、曲を小さく調整する
一番だけ、少人数で、好きな歌から、という形でも十分です。 - 参加の仕方を一つに決めない
歌わない参加も認めると、その子が自分から近づける余白が生まれます。
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まとめ|困ったときこそ、子どもの姿を見る
歌の時間のねらいは、全員が同じように歌えるようにすることだけではありません。
音や言葉を楽しむ。自分なりに表現する。友達の声や動きに気づく。誰かと楽しさを分け合う。
そのような経験も、歌の時間の中にあります。
子どもが歌わないとき。活動がまとまらないとき。保育者が進めることに精いっぱいになったとき。
すぐに「どうやって歌わせよう」と考えるのではなく、一度、目の前の姿を見てみましょう。
この子は今、何を感じ、どのような方法なら一緒に楽しめるだろう?
その問いから、曲、時間、人数、座り方、参加の方法を少し変えてみます。
意味のある活動だからといって、毎日、全員が、同じ形で行う必要はありません。
研究も、唯一の正解を決めるためではなく、子どもを理解する手がかりの一つです。
次の歌の時間には、歌声の大きさだけでなく、子ども同士が顔を見合わせる瞬間にも目を向けてみてください。

そこに、その子なりの参加と、人とつながる小さな喜びが見つかるかもしれません。
📚️参考文献
- Baier, J., Wöllner, C., & Wolf, A. (2021). Interpersonal Musical Synchronization and Prosocial Behavior in Children: No Effects in a Controlled Field Experiment. Frontiers in Psychology, 12, 784255.
- Savage, P. E., et al. (2021). Music as a coevolved system for social bonding. Behavioral and Brain Sciences, 44, e59.

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