〜貼り絵で広がる子どもたちの世界〜
こんにちは、シロロです。
今回は、**「体を使う経験のあとで生まれる表現」**についてお話しします。
テーマは「貼り絵」。でも、ただの制作活動ではありません。
■ 体を使って感じたことが、心の中に残る
体を思いきり動かした経験って、子どもたちの中に“確かな実感”として残ります。
走った、跳んだ、転んだ、笑った――。
そんな体験の積み重ねが、心を動かし、次の表現へとつながっていくんです。
ところが今の生活はどうでしょう。
大人も子どもも、体や手足を使って動く時間がどんどん減っています。
実はこれ、幼児の発達にとっては大きなマイナス。
体を動かす経験は、頭の働きを育て、人間らしい心を育てるためにも欠かせません。
だからこそ――
保育の中で「体を使う経験」を意識的に取り入れることが、とても大切なんです。
■ 貼り絵は“うまく作るため”の活動じゃない
ここで紹介する貼り絵は、手先が器用になるための練習ではありません。
目的は「人間らしく育つための一つの手だて」です。
紙の持つ可塑性(やわらかく形を変えられる性質)って、子どもにとってとても魅力的。
描くのとは違って、破いたり、切ったり、並べたりしながら、自分のイメージを何度も確かめることができます。
「こうしたい!」と思ったらすぐ動かせる。
試行錯誤ができる。
だから、貼り絵には“ゆとり”があるんです。
■ 実践:運動会のあとに取り組んだ貼り絵
運動会を終えたあと、子どもたちはそれぞれの経験を貼り絵で表現しました。
5歳児は「縄跳び」「リレー」。
4歳児は「ダンス」。
自分がやった姿、友だちの動き――それを思い出しながら、みんな真剣です。
「人の体って、どうやって動くんだろう?」
「腕はどっちに曲がる?」

実際にポーズをとったり、先生の体を見たりしながら考える姿も。
体の動きを観察し、紙を切って、貼って、動かして。
一人ひとりの作品には、**“自分の経験を見つめた時間”**が詰まっていました。

もう1つのクラスでは、みんなで玉入れを表現
もう1クラスの4歳児は、みんなで玉入れを貼り絵で表現しました。
ひとりひとりが自分を作り、真ん中の玉入れのカゴのまわりに貼っていきます。
実はこのクラス、練習の時からずっと負け続けていました。
最初は、玉が2つしか入らなかったそうです。
それでも、みんなで練習を重ねていくうちに、だんだん上手になって――
本番前には、もう1クラスといい勝負になるほど成長しました。
「負けたくない!」「今度こそ入れたい!」
そんな思いを胸に、一生懸命投げる姿が印象的だったそうです。
本番の運動会では、残念ながらほんの少しの差で負けてしまいました。
でも、子どもたちは悔しさの中にも満足感を感じていて、
「頑張ったこと」「みんなで力を合わせたこと」を大きなロール紙に貼り絵で表現することになりました。
投げるという動作も、体で学び、心で感じた経験。
その思いが紙の上に生き生きと表れていました。

■ 貼り絵は“動きの表現”を助ける道具
絵で動きを表そうとすると、難しく感じる子もいます。
でも貼り絵なら、頭や体、手足をパーツとして考えられるから、
「試してみる」「やり直してみる」ことができる。
失敗を恐れずに挑戦できるのも、貼り絵のいいところです。
だから、貼り絵は動きの表現を工夫するための有効な手だてになるんです。

■ 表現は“心と体”が動いてこそ生まれる
子どもたちが人や物、物と物との関わりを表現することは、
認識の広がりを育てる上でもとても大切なことです。
でもそのためには――
まず、子どもたちの心と体がしっかり動く場をつくること。

感じて、動いて、そして表す。
このサイクルを大切にすることが、保育の本質なのだと思います。


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